おやつにクッキーを食べようとした瞬間、ある記憶が蘇った。
子どもの頃、東京に遊びに行った帰りの電車で、向かいに座っていた女性がクッキーを食べていた。周りに気を使っていたのか、口を縦にゆっくりゆっくり動かしていた。噛むたびに鼻の下が伸びる様子がおかしく、その人が降りてから隣にいた妹と「さっきの見た!?」と笑ったのだった。
こんなささいなことをどうして覚えているのか。それは妹と笑いを共有したのが大きいのではないか。誰かと一緒に楽しむことで、記憶の点はより濃くなり、定着しやすくなるのかもしれない。
あの女性はどうしても食べたい気持ちと周りへの配慮が同時進行していたのだろう。そう思うとまたおかしく笑ってしまうのであった。